「天上の葦」上下 太田愛:著 :刊
まず言います。
これは最高に面白い!
ここ数年読んだ本の中で1番のおもしろさです。
こちらの本はシリーズモノの第3弾になります。これまでの2冊「犯罪者」「朱夏」もかなりのおもしろさでしたが、今回が1番です‼️
興信所の所長・鑓水、その社員・修二、警察官・相馬の3人が第1弾から登場しています。これまでの話を読まなくても、もちろん大丈夫ですが、面白いのでオススメです😁
物語はある老人が渋谷のスクランブル交差点のど真ん中で空の一点を指さし倒れるシーンからスタートします。その模様がテレビの生放送で流れたことにより、はるか昔に止まったままの様々な出来事が動き出します。
老人(正光)が最期に指したものはなんだったのか調べて欲しいと、鑓水の事務所に依頼が舞い込みます。
鑓水と修二が調査を始めると時を同じくして、警察官の相馬は行方不明になった公安の警察官・山波を探して欲しいと命令を受けます。
2つの出来事が交差し1つの事件となり、3人は共に行動します。
ミステリの定番・離島が舞台
そしてたどり着いたのが、瀬戸内海の小島でした。そこでは一筋縄ではいかない村の老人たちとの戦いが始まります。
初めはよそよそしい村人たち。その中でも優しく接してくれる人々もいますが、本当に味方なのか敵なのか分かりません。
独特な雰囲気が漂うこの島のストーリーが、何故か好みでした。
やがて真実が明らかになるのですが、涙なしには語れません😭😭
メインテーマがグッと胸に迫る(かなりネタバレ)
冒頭のシーンで正光老人がスクランブル交差点の真ん中で何もない空の一点を指さし倒れる印象的なシーン。
一体、老人は最期に何を伝えようとしていたのか。
この物語の重要なテーマです。
物語終盤、正光が指さしていたものは襲来するアメリカのB29の群れだという話になりました。
戦争中の酷い体験をしてきた老人からの、2度とそんな日々がきてはならないというメッセージだと。
そうだったのか、と一度は納得するも、更にラストでそのシーンは、デパートの東館と隣の西館を結ぶ空中ケーブルカーを指さしていたと判明。
子供限定のケーブルカーで、戦後のわずか2年間ほどしか運行しなかったそうです。(本当の話)
正光は子供たちの笑い声が溢れる楽し気な光景を指さしていたのです。
平和な時代をしみじみ噛みしめ、いつまでも続くことを祈って、正光老人は指さしていたのです。
この物語の要とも言える謎が、
負から正へ、暗から明へのイメージに転じたうまい仕掛けだと思いました。
ミステリとしてもワクワクドキドキしますが、時代を超えた壮大なスケールの物語として、戦争を知らない私でも胸をうつ話でした。
マスコミと権力。
遠い世界の話のようで、実は身近で起こりうる(もう起こっている)こととして実感しました。
シリーズが続くのか分かりませんが、次作を期待しています♡