「メイン・ディッシュ」 北森鴻:著 集英社:刊
いわゆる短篇連作集というスタイルで、短篇それぞれ独立したお話しではあるけれど、互いに繋がりがあり、全体として大きな物語になっています。
登場人物が皆、個性的で生き生きとしており、とても魅力的です。
主人公は小劇団の看板女優・紅林ゆりえ。
彼女が雪の降る日に"拾ってきた"三津池修ことミケさん。
同棲生活?を送る2人ですが、ミケさんは自分の過去については語らず、ゆりえもあえて問いただすことはありません。
ミケさんは料理が得意で、それを目当てに劇団員たちがゆりえの部屋に集まってきます。そこでは、劇団の周りで起こる謎をミケさんが鮮やかに解き明かします。
料理の描写がとてもリアルで読んでいると食べたくなってきます。
後半はミケさんの過去が明らかになっていき、ラストはまあ、ハッピーエンドかと思います。
短編が有機的に絡み合って、とても面白いお話しでした。
短編自体にも仕掛けがあって、騙されてしまいました・・・。
「共犯マジック」 北森鴻:著 徳間文庫:刊
北森鴻つながりで読みました。
「フォーチュンブック」という発禁処分になった1冊の本を巡る短編集です。主人公は長野県のある町の書店でひっそりと売られていた「フォーチュンブック」を買い求めたり、買い損ねた人々です。
時間の流れが大きく、全体として数十年のスパンなので、今はいつの時代か?と迷うこともありました。
最初は安保闘争が出てきたりして、とっつきにくかったのですが、時代が下るに従って、ホテルニュージャパンの火災や3億円事件などが出てきて、俄然おもしろくなってきました。
「フォーチュンブック」を巡る人々の数奇な運命が絡み合って壮大なストーリーでした。
全体としては暗めの印象で悲壮感漂う感じではあります。
北森鴻は民俗学からミステリまで幅広い分野の著作があり、もう新刊が読めないのが残念でなりません。