「路上のX」桐野夏生:著 朝日新聞出版:刊
★★★
居場所のない女子高校生3人が渋谷の街で生き抜くサバイバル小説です。
ネグレクト、育児放棄、JKビジネスなどかなり読んでいて辛いお話しです。
主な主人公は親に見捨てられ叔父夫婦に預けられた16歳の真由とネグレクトの両親から逃げて渋谷でJKビジネスをしている17歳のリオナです。
居場所がないということでは同じ2人ですが、性格はかなり違います。幼い頃から親にネグレクトされてきたリオナは逞しく、叔父夫婦に預けられるまでは割と裕福な家で育てられた真由はどこか世間知らず。価値観の違いから衝突することもしばしばある2人。喧嘩しては仲直りしてを繰り返して物語は進みます。
本当にくそみたいな大人しか出てきません。これが現実なんでしょうか。唯一まともだったのが、真由がレイプ被害を訴えた女性警察官の伊藤さんのみです。
ラストも真由の両親のダメっぷりがさく裂して、ハッピーエンドとは言い難い気がします。
「邪馬台:蓮丈那智フィールドファイルⅣ」 北森鴻/浅野里沙子:著 新潮社:刊
★★★
先日の「日御子」に続き、邪馬台国モノです。こちらは歴史モノではなく、現代小説です。民族学者・蓮丈那智が主人公のシリーズで、既に何作か出ています。
民俗学がベースになったミステリ?サスペンスで、古事記・日本書紀、昔話などが引用され、読みにくい箇所もあるのですが、謎解きは面白く、ぐいぐい読めてしまいます。
邪馬台国の謎がフィクションとはいえ、説得力をもって解き明かされて、すっきりしました。
実はこの作品の完成前に作者の北森さんは亡くなったそうです。後半は公私ともにパートナーであった浅野さんが引き継いで仕上げたとか。一部、構想メモもあったそうですが、それでもあれほど広がった謎を説得力をもって収束させるのは大変だっただろうなと思います。